「ドイツに長期滞在するなら健康保険はどうすればいいの?」これは多くの留学生や研究者が直面する大きな疑問です。日本のように自動加入はなく、自分で保険会社を選ぶ必要があります。本記事では、公的保険とプライベート保険の特徴や選び方をまとめました。

健康保険は加入必須
ドイツに3ヵ月以上研究留学する方や帯同家族は、滞在許可証の取得が必要です。その申請条件の一つが健康保険の提出で、未加入のままでは申請ができません。つまり、留学生活を続けることが不可能になり、もちろん無保険では病院の受診もできません。
公的保険とプライベート保険
ドイツの健康保険制度には、公的保険(Gesetzliche Krankenversicherung / GKV)とプライベート保険(Private Krankenversicherung / PKV)の2種類があります。日本のように全員が国民健康保険に自動加入するわけではなく、自分でどちらに加入するかを選択します。
公的保険(Gesetzliche Krankenversicherung / GKV)
ドイツ人の多くが加入している保険です。収入に応じて保険料が決まり、安価で幅広い補償が受けられます。30歳未満の無収入の学生には「学生割引」があり、最安金額で加入できます
加入者は、かかりつけ医(Hausarzt)を通して医療を受けるのが原則です。
留学生や研究者によく選ばれるのは、TK、AOK、DAKなどです。

プライベート保険(Private Krankenversicherung / PKV)
通称「お金持ち保険」と呼ばれるプライベート保険です。誰でも加入できますが、公的保険に比べて保険料は高額です。その分サービスの自由度が高く、以下のような特徴があります。
補償内容
医療費
公的保険・プライベート保険のいずれかに加入していれば、診察代・薬代・入院費など基本的な医療費は保険でカバーされます。
公的保険とプライベート保険の比較
公的保険 | プライベート保険 | |
料金 | 安い | 高い |
保証範囲 | 基本的なものはすべてカバー | 契約内容に応じて補償範囲が広く、自由度が高い |
受診可能機関 | 開業医(Hausarzt)やほとんどの病院 専門医は紹介状が必要 | 公的保険で受診可能な医院+専門医、私立クリニック、大学病院 紹介状なしで専門医を受診可 |
待ち時間 | 長い | 短い(優先診療) |
薬 | ほとんどが無料 ジェネリックが基本 | ほとんど無料 ジェネリック以外も選択可 |
歯科治療 | 基本的な治療はカバー ブリッジ・インプラントなどは自己負担 | ブリッジ・インプラント・矯正まで幅広く補償(契約による) |
眼鏡・ コンタクト | 18歳以上は原則自己負担(子どもは補助あり) | 補助が出るプランも多い |
入院 | 公立病院・大部屋が基本 医師の指名不可 | 個室・教授クラスの医師による治療が可 |
家族加入 | 無収入の家族を追加料金なしで扶養加入可能 | 家族を扶養で無料加入はできず、一人ひとりが加入・保険料の支払いが必要 |
人間ドッグ | 一部負担(年齢による) 定期健診一部補助(年齢による) | 全額負担が多い(プランによる) |
その他 | 海外渡航時の補償がつくこともある |
プライベート保険の優遇例
プライベート保険の患者さんは、診察でほとんど待たされません。待合室に人が並んでいても、保険証を見せるだけですぐ診察です。入院すれば偉い先生が挨拶に来てくれたり、退院時に花束をもらえるという話もあります。
保険会社から支払われる金額が大きいため、医療機関にとっては「特別なお客さま」なのです。
公的保険の追加保険
公的保険でも、追加料金を払えば補償内容を広げられます。歯科治療の追加は検討するといいです。
通常、公的保険では銀歯など基本治療のみが対象で、ブリッジやインプラントは保険適用外となり高額です(日本の半額程度ですが実費)。追加保険を付ければ、これらも補償対象になる場合があります。詳しくは加入先の保険会社で確認してください。
保険の種類によって受診できる医療機関やサービスは異なります。詳しくは 下記をご覧ください。

公的保険の費用
基本保険料に介護保険料を追加した合計額が保険料になります。介護保険は全員支払う必要があるので外国人でも学生でも加算されます。
※金額は2025年時点の目安、保険会社や追加保険料によって多少前後します
29才以下、無収入の学生
基本保険料(保険料+追加保険料):100~115€
介護保険料:35.91€
合計:135~155€
30才以上、無収入の学生
基本保険料:200~250€
介護保険料:40~50€
合計:240~300€
加入の仕方
ドイツの健康保険への加入手続きは非常に煩雑で、時間がかかります。自力で手続きをしようとすると、半年以上かかることもあるので、ご注意ください。
1.研究者・留学生(収入有り)
大学に併設された保険代理店を利用するのがおすすめです。窓口でサポートが受けられるため、必要書類の確認や加入がスムーズに進みます。
2.留学生(収入無し)
3ヵ月以上のドイツ滞在には長期滞在VISA取得者でない限り、滞在許可証が必要になります。滞在許可証の取得には、ドイツの銀行口座開設と健康保険加入が必須なので、無収入の学生には、どちらの取得も提出書類が増えハードルが高くなります。
そこで役立つのがExpatrioやFintibaです。これらを利用すると、閉鎖口座と健康保険をまとめて準備でき、渡独前にインターネットで簡単に手続きできます。
3.インターネット
自力での手続きは時間がかかりやすいため初心者にはあまりおすすめできませんが、各保険会社のサイトから直接申し込むことも可能です。「簡単に入れます」と謳っている会社も多いので、自信のある方はトライしてもいいですね。
特に Dr.Walterは、プライベート保険を扱う会社で、渡独前に日本から英語で比較的簡単に契約できます。ただし、短期滞在・プライベート保険に限られ、加入条件もあるため事前確認が必要です。

保険加入の注意点
プライベート保険から公的保険への切り替えは原則不可
例外はありますが、いったんプライベート保険に移ると公的保険へ戻るのは難しくなります。公的保険からプライベート保険へ切り替える際は、将来のことも考えて慎重に判断してください。
学生の注意点
在学中に「公的保険の義務免除(Befreiung)」を選ぶと、その在学中は公的保険に戻れなくなります。加入手続きのオンラインフォームで「Ja/Nein」を選ぶ箇所があり、安易に「Ja(免除)」を選択しないようご注意ください。
まとめ
ドイツで3ヵ月以上滞在するには健康保険の加入が必須です。保険は「公的保険(GKV)」と「プライベート保険(PKV)」があり、公的保険は安価で安心、プライベート保険は高額ですが補償が充実しています。
30才未満の学生は公的保険なら割引が適用され、月額約110ユーロで加入できます。特に無収入の学生には Expatrio の利用がおすすめで、健康保険がサービスに含まれているためスムーズに手続きが可能です。
保険の種類によって受診できる医療機関が異なるので、受診前には確認しましょう。
文:レンガ
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