ドイツの小学校は、日本と比べて授業時間や生活スタイル、授業の進め方が大きく異なります。
特に下校時間の早さや、親のサポートの必要性に驚かれる方も多いのではないでしょうか。
本記事では、ドイツの小学校の1日の流れや授業内容、生活の特徴について、実体験をもとに詳しく解説します。
ドイツの小学校の全体像については、こちらの記事もあわせてご覧ください。

ドイツの小学校の1日
ドイツの小学校は、日本と比べて朝が早く始まり、早い時間に終わるのが特徴です。
学食を利用せず午後まで学校にいる場合は、朝食・昼食・スナック・水筒を持参します。
一方、午前中のみの子どもは、朝食と水筒のみ持参するケースが一般的です。
登校時間と下校時間
ドイツの小学校は8時頃に授業が始まり、1〜2年生は12時頃、3〜4年生も基本的には同様に午前中で終わる日が多いです。
ただし、3〜4年生になると、週1〜2回程度は午後の授業があり、14〜15時頃まで授業が行われることもあります。
また、日本のドイツ学園などでは授業時間が長く、2年生から15時頃まで、4年生では金曜日以外は毎日15時頃まで授業があるなど、学校によって大きく異なります。
日本と比べるとかなり早く、「こんなに早く終わるの?」と驚く方も多いですが、どの学校も同様の傾向があります。
下校時間が早い理由としては、登校時間が早いことに加え、日本のような朝の会・終わりの会・掃除の時間がないことが挙げられます。
登校後すぐに授業が始まり、最終授業が終わるとすぐに下校する点も日本との大きな違いです。
授業の時間と特徴
授業は1コマ45分で、午前中に4〜5コマ程度行われます。
教科は日本と大きく変わりませんが、特徴的なのは宗教の授業がある点です。多くの場合、宗教または道徳のどちらかを選択することができます。
朝食・昼食・スナック
ドイツの小学生は、朝食(Frühstück:フリューステュック)を学校に持参し、2時間目の前後に教室で食べることが一般的です。
サンドイッチやフルーツ、ヨーグルトなどが定番で、基本的に自由ですが、過度に甘いものは注意されることがあります。
昼食は、お弁当を持参するか、学食(Mensa)を利用します。教室で食べるのではなく、メンザに移動して食べます。
午後の授業や学童がない場合は、昼食をとらずにそのまま帰宅することもあります。
また、登下校や休み時間にはメンザや自動販売機でスナックや飲み物を購入することもできます。学童やクラブ活動に参加する子どもは、軽食を持参することが多いです。
掃除
ドイツの学校では、生徒が掃除をすることは基本的にありません。清掃スタッフがいるため校内は保たれていますが、土足で過ごすため床は汚れていることもあります。
年に1〜2回、長期休暇前に生徒が掃除を行う日が設けられることがあります。
クラブ活動(AG)
ドイツの小学校には、AG(Arbeitsgemeinschaft)と呼ばれるクラブ活動があります。
週に1回程度で、サッカーやダンス、手芸などから自由に選択できます。参加は任意で、学校によっては実施していない場合もあります。
学童(Hort・OGS)
学童(HortやOGS)が併設されている学校では、15時〜16時半頃まで預かってもらうことができます。
ただし、「共働き家庭のみ利用可能」など条件がある場合や、学童自体がない学校もあります。
この点は生活に大きく影響するため、入学前に必ず確認しておくことが重要です。
塾・補習について
ドイツでは、日本のように塾に通う文化は一般的ではありません。
学校内での補習や家庭教師(Nachhilfe)を利用することはありますが、受験対策のために長期間通う進学塾はありません。
塾や学習サポートについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
小学校の授業内容と進め方
主要科目(ドイツ語・算数・生活)
主な授業は、ドイツ語(Deutsch)、算数(Mathematik)、生活(Sachunterricht)の3科目です。
2年生から英語が始まり、学校によっては音楽や合唱に力を入れている場合や、日本のドイツ学園のように日本語の授業があるなど、学校ごとに特色があります。
発言・自己主張が重視される
ドイツの授業では、自分の意見を人前で発言することが重視されます。
多くの子どもが積極的に手を挙げ、日本のように静かに話を聞くだけの授業とは大きく異なります。
はじめは発言に慣れていない子どももいますが、時間の経過とともに徐々に手を挙げて発言できるようになります。
グループワークと発表が中心
ドイツの授業ではグループワークが多く、課題を共同で解いたり、結果を発表する機会が頻繁にあります。
プレゼンテーション資料を自分で作成したり、詩や物語を考えて発表したりするなど、小さい頃から表現力を養う授業が行われています。
そのため、小学校を卒業する頃には人前で発表することに慣れている子どもが多いのが特徴です。
教室にとらわれない学習スタイル
ドイツの小学校では、演習やグループワークの時間になると、教室だけでなく廊下や屋外で活動することもあります。
日本のようにクラス全員で同じ場所に移動するのではなく、それぞれが好きな場所を選んで課題に取り組むスタイルが一般的です。
日本ではあまり見られない光景ですが、子どもたちはリラックスした雰囲気の中で、楽しみながら学習しています。
教科別の特徴
ドイツ語(Deutsch)
1〜2年生では、大文字・小文字や筆記体、単語や文章の読み書きなど基礎を学びます。
3〜4年生になると難易度が一気に上がり、「文章の要約」や「物語の作成」といったドイツらしい授業が始まります。これらは中等教育(Sekundarstufe)以降も続くため、小学校の段階でしっかりと基礎を身につけることが重要になります。
例えば、文字のない4コマ漫画を読み取って物語を作ったり、「Pippi Langstrumpf(長くつ下のピッピ)」の要約、「グリム童話」を参考に物語を書くなど、表現力を養う課題が多く出されます。
日本のように「登場人物の気持ちを答える」だけでなく、それを物語の中で表現する力が求められるのも特徴です。
算数(Mathematik)
学習内容自体は日本と大きく変わりませんが、進め方や教え方に違いがあります。
例えば、2年生で掛け算を習いますが、日本のような九九はなく、最初は歌で覚え、その後暗記していく方法が取られます。
また、ペアで問題を出し合う形式や、短時間のテストを繰り返すなど、反復を重視した学習が行われます。
もう一つの特徴は、ひっ算をすぐに教えず、計算の仕組みや理論を重視する点です。最終的にはひっ算に近い形に進みますが、基礎理解を重視した進め方になっています。
生活(Sachunterricht)
日本の「生活」に近い教科で、実験や観察、課外授業が多く、子どもたちに人気のある授業です。
一方で、テストでは学んだ内容を細かく覚える必要があり、負担が大きい教科でもあります。
例えば、アリの社会構造や人間の目の仕組み、動物の特徴などを学び、それらを正確に覚えてテストで答える必要があります。
内容自体は難しくなくても、頻繁にテストが行われるため、継続的な学習が求められるのが特徴です。
移民・外国人への対応
ドイツ語ができなくても通える?
ドイツでは、ドイツ語が話せなくても通学は義務となっており、学校に通う必要があります。
移民の受け入れが多い国であるため、ドイツ語が全く分からない状態で入学する子どもも少なくありません。
ただし、その対応は州や学校によって異なります。
移民クラスと通常クラスの違い
学校や地域によっては、ドイツ語を重点的に学ぶ「移民クラス」が設けられている場合があります。
例えば、デュッセルドルフの一部の学校では、ドイツ語ができない子ども同士で授業を受ける移民クラスがあります。先生のサポートが手厚い一方で、ドイツ語に触れる機会は少なくなります。
一方、アーヘンでは移民クラスがない学校も多く、ドイツ人の子どもと同じクラスで授業を受けながら語学を習得していきます。この場合、授業についていくのは大変ですが、友達ができやすく、語学の上達は早い傾向があります。
また、通常クラスに在籍しながら、追加でドイツ語の授業を受けることもあります。
1年下の学年からスタート
ドイツ語が不十分な場合、1年下の学年からスタートすることもあります。
例えば、移民の子供はドイツ語がままならないため、本来は3年生でも2年生から開始し、授業についていけるようにします。
特に3〜4年生はテストや進路が関わる重要な時期であるため、語学が十分でない状態で進むと大きな負担になります。そのため、入学時に1年下げてスタートすることが勧められることもあります。
4年生の途中から入学した場合は、GymnasiumやRealschuleなどの進路選択にも関わるため、無理をせず学年を調整することもあります。
学校生活の特徴
ランドセル
ドイツにもランドセルはありますが、日本のように必須ではありません。
カラフルで、キャラクターや動物のデザインが多く、子どもに人気があります。体操着入れや筆箱などがセットになっていることも一般的です。
ただし、日本のランドセルと同様にやや重いため、1年生には負担になることもあります。
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服装・体操着・上履き
ドイツの小学校では、服装の自由度が非常に高く、服装や髪型、アクセサリーなどに細かな規定はありません。
日本と比べると、ネイルやピアスをしている子どもも見られ、最初は驚くこともあります。
また、指定の体操着はなく、体育の授業は動きやすい服装であれば自由です。水泳についても同様で、指定の水着はなく、ビキニなどを着用している子どももいます。
日本のように校舎の入り口で上履きに履き替える習慣はなく、教室の前で履き替えるケースが一般的です。そのため廊下は土足で歩くことになり、学校によっては上履きを使用しない場合もあります。
宿題と家庭学習
宿題の量と内容
ドイツの小学校では、日本のように毎日決まった宿題(漢字や計算プリントなど)が出されるわけではありません。
宿題の有無や量は先生によって異なり、授業内で終わらなかった課題が宿題になるケースが一般的です。
また、「Lernzeit(学習時間)」と呼ばれる時間に課題を進めることがあり、その中で宿題を終わらせる子どももいます。
全体として宿題の量は少なめで、家庭での学習を強く求めない方針の学校も多く見られます。
一方で、学習アプリ(Antonなど)を使って課題が出される学校もあります。
親のサポートが必要な理由
ドイツの小学校では、3年生から本格的なテストが始まり、3年生では月1〜2回程度、4年生になると毎週実施される学校もあります。
特に4年生前半の成績は進路(ギムナジウムやレアルシューレ)に大きく影響するため、この時期の学習は非常に重要です。
テストの難易度は決して低くなく、日本のような塾も一般的ではないため、家庭でのサポートが重要になります。
実際には、親が内容を確認し、一緒に復習やテスト対策を行うケースが多く、サポートの有無によって成績に差が出ることもあります。
ドイツのテストや、Antonなど学習アプリについては、こちらの記事をお読みください。
長期休暇
ドイツでは、仕事だけでなく休暇も非常に大切にされており、小学校でも同様に長期休暇がしっかり設けられています。
夏休みは約6週間、クリスマス休暇は2〜3週間程度と、日本と比べて長めなのが特徴です。
このほかにも、イースター休暇(Ostern)や秋休み(Herbstferien)など、年間を通して複数の休暇があります。
そのため、学校生活は「しっかり学び、しっかり休む」というメリハリのあるスタイルになっています。
ドイツ人については、こちらの記事をお読みください。
まとめ
ドイツの小学校は、日本と比べて下校時間が早く、授業や生活のスタイルも大きく異なります。
授業では発言やグループワークが重視され、自由度の高い環境で学ぶのが特徴です。
一方で、宿題は少ないもののテストや進路は重要で、家庭でのサポートが欠かせません。
また、移民への対応や学習環境も学校によって異なるため、事前に理解しておくことが大切です。
実際の生活や授業の特徴を知ることで、ドイツの小学校への適応がスムーズになります。
ご家庭の状況に応じたサポート方法や学習の進め方については、お気軽にご相談ください。
文:レンガ